「Rewrite」此花ルチアルート 感想

 ネタバレ注意。
 雑感の前提:ルチアルートのみクリア

 シリアスとギャグ、甘い恋愛パートと切迫した秘密組織パートの切り替えが上手く、いい感じに緩急の付いたシナリオだった。更に、適宜挟まれる戦闘パートが気持ち良いスパイスを加えている。王道ながらも、「委員長」然とした共通パートから、主人公に甘えた姿を見せる個別パートへの落差もおいしかったし、また素直になれない時期には、親友である静流の話を通して浮かれている彼女の姿を垣間見られる、というのもいい演出だったように思う。全体を通して、シナリオの切り替え方は上手かったし、楽しめる構成になっているのだが、いかんせん、プレイし終わった時に「何が伝えたいのか分からない」部分が長かったようにも感じてしまった。
 つまり、この話は結局、単にルチア(旭春花)の自己肯定の物語である。そして、それに必要だったのは、瑚太郎のラストでの「お前が居なければ俺は死んでしまう」というあのたった一言だ。
 プレイヤーは当初、ルチアが白い手袋を外せない話や、猫や花を触れない話を解決することで、彼女の自己肯定が出来ると考える。しかし、読み進めていく内に、彼女の手袋や動植物の忌避には、単なる心の傷のみではなく"実質的な"意味があることが分かってしまう。次に、アサヒハルカの問題を解決することで上手く行くのだろうと考えるのだが、「未来の人類」というよく分からない単語があまりに唐突に出て来た上、更に新しい謎が提示されることで、読み手としてはこの話がうやむやにされてしまったような印象を受けることになる。そして最後に、旭春花=此花ルチアを肯定してくれ、という主題が再び出て来るが、この主題に対する解(瑚太郎からの「お前が必要だ」という言葉が欲しい)は、ルチアの独白や地の文で相当前から読み手に知らされている。そうであるに関わらず、主人公は「毒を解決する方法は必ず見つかる」や「生きろ」を連呼し続け、読んでいる側としては苛立ちを覚えずにはいられなくなるのだ。そしてラストで、これだけ長い話を引きずって来ておいて、結局は「お前が必要だ」と口にして相手を抱き締めるだけで解決、というのは、少々落とし所としても問題があったように感じるし、途中までのシナリオは一体何が伝えたかったのだろう…と考えてしまったりもした。
 また、幾ら次世代人類プロジェクトによって洗脳されているという設定であるとはいえ、風祭市を彼女に壊滅させるのはやりすぎだっただろう。また、それだけのことをやっておきながら、その後ちはやを毒で犯してしまった時には泣き出しそうになる、といった描写にもちぐはぐな面を感じずにはいられない。そして、「日の光を見ない誓い」が一応語られはするが、知己を含め二十万人もの人間を殺したルチアがその罪をきちんと受け止め、贖罪を考えている…とプレイヤーが納得するには、後日談は短すぎ、彼女の罪がきちんと語られていない印象を受けた。
(2011/06/30 01:52)